まずは心の準備を。その後に具体的なイメージを。
新しい人生のために離婚を選択したはずなのに、離婚の手続きが終わったとたん、もぬけの殻になってしまうかたがいらっしゃいます。その一番の理由は、心の整理をしっかりせずに離婚へと進んでしまうこと。相手への憎しみや不満を残したままだと、離婚後も気持ちが前の関係にとどまってしまことも多く、離婚を後悔したり、新たな一歩を踏みだすことが難しくなってしまうのです。
離婚後の生活を具体的に考えることなく離婚をしてしまった場合も、離婚を後悔することが多いです。想像以上の生活の変化に、「これならがまんして結婚生活を続けていた方がましだったのではないか」、と思ってしまいます。
日本の離婚の9割を占める「協議離婚」では、夫婦の話し合いだけで離婚ができます。しかし、みんなが穏やかに話し合いをしているとは限りません。離婚の話し合いは精神的に負担も大きく、時には感情的にののしりあってしまうご夫婦も。
離婚の話し合いが修羅場になると、離婚後もお互いに心のわだかまりを残りがちです。一時は結婚するほどの好意を持ったパートナーなのですから、最後は穏やかに、できることなら離婚後も感謝の気持ちを持ち続けられるような話し合いを進めてほしいと思っています。
そのために大切なことは、話し合いを始める前に、しっかりと自分の気持ちの整理をしておくこと。気持ちが固まったら、離婚についての情報を調べましょう。何を話し合うべきかを知り、自分が譲れないこと、譲歩できることを、しっかり決めておくことが大切です。(たとえば、子どもの親権と大学卒業までの養育費は譲れないけれど、不倫の慰謝料請求をしない、など)。
揉めない離婚・後悔しない離婚のためには、離婚を切り出す前にどんな準備をしたらいいのでしょう?
離婚を決意されているかたも、まだ迷っているかたも、ぜひそれぞれの項目について考えてみてください。
一番大切なのは心の準備
離婚をするにしても、もう一度やり直すにしても、自分と子どもが幸せに暮らすためにはどうしたらよいか、一度ゆっくり考えてみましょう。DVなどで危険な状態でないのなら、あせって結論を出す必要はありません。
これまでの人生は何だったのだろう、と思ってしまうかた
90年代のトレンディドラマでは、女性の結婚適齢期がクリスマスケーキにたとえられていたのをご存じですか。
クリスマスイブの24歳がベストタイミング、クリスマス当日の25歳に売れ残ったら価値は半分、というものです。当時は、「腰かけOL」(結婚したらすぐに退職する補助職的なOL)、「寿退社」(結婚を理由に退職すること)ということばも普通に使われていました。今では考えられませんが、ほんの1世代前のことです。
この時代に結婚した女性の多くが専業主婦として家事育児に専念し、子育てがひと段落した今、夫とふたりきりの未来が見えてくる時期に差し掛かっています。
そして、ふと思うのです。自分の人生は何だったのか、これから夫婦ふたりの生活はどうなるのか、と。
そして、離婚を考え始めるかたもいらっしゃいます。いわゆる「熟年離婚」です。
けれど、「夫の収入で生活している以上、今の生活を続けるためには自分ががまんするしかない」「今から仕事を探そうと思っても、なんの経歴も資格もない私には無理」「子どもにちゃんと教育を受けさせるためには、離婚はできない」
そう考えて、動けない自分ばかりが損をしているように思っていませんか。経済的に自立できていない自分に自己肯定感を持てずにいませんか。
昔の自分はどうだったか、思い出してみましょう
離婚の相談にいらっしゃる女性で、「自分が大好き!」という方は少ない印象です。
いつも自分のことは後回しで、良い母、良い妻として、家のこと子どものことを一生懸命やってきたのに、パートナーに不倫をされたりして、「自分のやってきたことは何だったんだろう」と空しくなっている方も多くいらっしゃいます。
でも、思い返してみてください。結婚前から今のような自分でしたか?
昔は興味のあることに挑戦したり、行きたいところに行ってみたり、好きなお店でアルバイトをしたり、夜中まで読書に熱中したり、と、心の思うままに過ごしていませんでしたか。決して、誰かのために自分を犠牲にしてはいなかったはずです。
「妻だから」「夫のため」「子どものため」を「自分のため」に変えてみましょう
結婚生活を維持するうえで、家族の中での役割分担というのは確かにあるでしょう。しかし、家族はそれぞれが協力して成り立つものであり、誰か一人が自分を後回しにして尽くすことでまわるものではありません。
もしあなたが、「妻だから」「夫のために」「子どものために」と思ってやっていることにストレスを感じているのなら、それは自分がやりたいことではないのかもしれません。
本当は何がしたいのか、自分に問いかけてみましょう。どんなささいな場面でも構いません。がまんしたり遠慮したりして、出来ずにいることはありませんか?例えば、夫は休日でも自由に出かけるのに、自分は夜や休日に行きたいところがあってもやめておく、ということはありませんか。
長い間、自分を後回しにする生活をしていると、自分が何をしたいのか、どう思っているのかを感じられなくなってしまいます。それでも、自分の気持ちに耳を傾け続けることが、自分を癒し、心の虚しさを軽くすることにつながります。そして、自分が「本当にやりたいこと」が少しずつ見えてきます。
離婚するかしないか、は、「自分軸」で判断しましょう
自分のやりたいことが見えてきたら、自分の望む生活を具体的に想像してみましょう。
どこに住んで、どんな仕事をして、どんな一日を過ごしていますか。老後はどうなっていたいですか。
大切なのは、自分自身と自分の未来に目を向けることです。
そして、自分の思い描く未来を実現するために、本当に離婚が必要なのかを考えてみましょう。「今の状況に耐えられないから離婚する」のではなく、「自分の望む未来のために離婚をする」と思えるかどうか。それをしっかり考えて結論を出すようにしましょう。
離婚の前に一番大切なことは、自分の心に向き合うこと。自分が軽やかに楽しく生活できるような未来を描くことなのです。
まとめ
自分の気持ちをおざなりにしている感じや、家族のために自分を犠牲にしているのに報われていない感じがありませんか。そういった生活を続けていると、自分の気持ちを感じる力が弱ってしまいます。
「自分はどう思っているのか」「自分はやりたいことは何なのか」と、自分の気持ちに向き合いましょう。
そして、自分の未来のために「離婚」を選択することが必要か、しっかり考えてみましょう。
離婚に向けて、具体的なイメージを固める
離婚の決意が固まったら、離婚の理由と、希望する離婚条件を明確にしましょう。
自分の気持ちを整理して離婚の決心がついたら、次にするべきことは、離婚の理由をどう伝えるか、離婚に際してどんな希望があるか、を考えることです。
協議離婚では、どのような理由でも離婚は成立しますが、相手が納得できる理由がなければ、離婚に合意してもらうことが難しくなります。相手の性格を考え、自分の思いを伝えるにはどのように話すのがいいのかも考える必要があります。
また、自分の希望する離婚の条件がすべて通るわけではなく、自分が折れなくてはならないことも出てきます。自分が優先する条件は何なのか、を明確にしておくことで、離婚の話し合いをスムーズに運ぶことができるのです。
離婚条件を考えるにあたっては、離婚後の生活設計が大切
離婚をしてしまうと、元通りの生活には後戻りできません。
離婚を切り出す前に、離婚後の生活を細かいことまで具体的に考えておきましょう。
離婚後は、生活環境が大きく変わります。そのなかでも、仕事やお金などの経済的なこと、住まいのこと、子どもとの生活について、の3つが大きな問題となってきます。離婚後の生活をリアルにイメージして、なんとかなるだだろう、という目途をつけておくことが必要です。
仕事やお金について具体的に考えてみましょう
何はおいても大切になってくるのは、お金です。
まずは、必要な生活費をリストにしてみましょう。
家賃・光熱費・食費・通信費・日用品・交通費・教育費・交際費・医療費・被服費・保険料、その他で、毎月の支出がいくらになるかを計算します。
さらに、手取りの給与額、養育費、児童手当、児童扶養手当、児童育成手当、ひとり親家庭の住宅手当も書き出し、収入から支出を引いてみます。
このシミュレーションをしないで勢いで離婚をしてしまうと、後から後悔することにもなりかねません。収支がマイナスなら、収入を増やすか支出を減らすにはどうしたらいいか考えてください。公的な支援を調べてみるのもおすすめです。
離婚後の住まいはどうしますか
さらに、離婚後にどこに住むかは大きな問題です。今の家に住み続けるのか、実家に戻るのか、新しく借りるのか、などによって、金銭面の負担が変わってきます。それぞれメリットとデメリットがあるので、しっかり検討しましょう。
- 今の家に住む:生活環境が変わらないので、子どもへのストレスが一番少ない。賃貸だと家賃の負担が大きいことも。ローンが残っている自宅の場合は注意が必要。
- 実家に戻る:家賃がかからない、家族のサポートがあることが安心。デメリットは、身内ということで遠慮なく接してしまって、もめごとが起こることも。
- 賃貸住宅を借りる:家賃は高いが、住みたい場所の物件を選べる。
- 公営住宅を借りる:民間の賃貸住宅に比べて家賃が安く、更新もない。募集期間が決まっているので、いつでも入居できるわけではない。
子どものケアについて
両親の離婚は、子どものメンタル面でも生活面でも大きく影響してきます。子どもを犠牲にすることのないよう、慎重に対応しましょう。
- 離婚の理由を説明する
子どもはとても敏感に家庭の雰囲気を感じとっています。ケンカが絶えない両親の間を取り持とうと無理に明るくふるまったり、どちらの味方にもならずに中立でいるために心を配っていたりして、家族がまとまることを望んでいたりするものです。当事者である夫婦以上に、夫婦間の状況を客観的にわかっていたりもします。
ですので、離婚をするなら、その理由をきちんと子どもに説明しておくことが必要です。
今どうなっていて、これからどうしたいと思っているのか、これからの学校や生活について、など、子どもにわかりやすい言葉で説明して、これからの不安や負担を少なくするように心がけましょう。
- 離婚の時期を検討する
子どもの新学期や進学入学に合わせることもよくあります。離婚後に転校や苗字の変更がある場合は特に、子どもの気持ちを考えて配慮をしましょう。子どもにとって負担の少ない時期に離婚が成立するように、あらかじめスケジュールを立てるようにします。
- 精神的なサポートを
離婚家庭の子どものアンケートでは、「親のケンカを見なくてすむようになった。家が安全で明るい場所になった。自分の心が強くなった」というポジティブな意見もあるものの、マイナスとして、「不安・孤独・寂しさに苦しみ、苦しむ自分を責めて自己嫌悪に悩み、被害感に悩んでいる」という意見もあります。
離婚後の生活の変化は、子どもにも大きな負担です。子どもの気持ちをしっかり聴いて配慮することが大切です。
まとめ
離婚を決める前に、まず自分の気持ちと向き合いましょう。
「自分はどう思っているのか」「自分はやりたいことは何なのか」と、自分の気持ちを確かめて、本当に離婚が必要なのか、考えてみましょう。
離婚を決意したのなら、相手を納得させられる離婚理由を示せるようにしましょう
離婚の条件の優先順位を明確にしておきましょう
離婚後の生活を具体的に思い浮かべてみましょう
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