まだ住宅ローンが残っています:自宅、残したいですよね。でも多角的に考えて

家を買うというのは、人生の一大イベント。たぶん一番高価な買い物だと思います。休日のたびに不動産巡りをして(またはひとめぼれで)ようやく出会い、多額のローンを組んでまで手に入れた家は、立地も間取りも理想に近く、思い入れもひとしおな場合も。 けれど、いざ離婚の財産分与の場面では、不動産をどうするかがネックになってしまうことが多々あります。とりわけ住宅ローンが残っている場合には「家をどうするか」だけが決まらないために、離婚自体ができないことも。

いったいどうして、住宅ローンの残っている不動産があると、難しいのでしょうか。

それは、「財産価値の大きさ」「思い入れ」「借金が多額」「第三者がからむ」などといった、いろいろな要素がからまっているからです。

ローン付き不動産が、保険や預金などのほかの財産と決定的に大きく違う点は、

  • 多額のローンを組んでいる
  • そのローンが長期に渡る
  • 何千万円という大きな資産である
  • 「住める」というメリットがある
  • 夫婦ふたりで「こうしよう」と決めても、銀行がオッケーしないこともある

このなかでも特に特徴的なのが、「ローンの貸し手(銀行など)という第三者がからんでいるために、夫婦だけの問題ではすまされない」こと。夫婦の話し合いだけでは完結しないことが、問題をいっそう複雑にしています。

多額の借金をしてまで買ったお気に入りの家ですし、思い出もいっぱいあることでしょう。「将来、子どもが帰る場所」として残したいという方向で検討するかたも多いのですが、場合によってはその考えに縛られずに、本当に残すべきか広い視野に立って考えることが必要になります。

その際に、まずイメージしてほしいことは、「夫婦の収入で、これからローンを支払っていくことが可能か」ということです。

離婚して別々に暮らすことになると、夫婦の収入は変わらないのに、支出は大きく増えることになります。例えば、家賃、駐車場、電気ガス水道など光熱費(使用量も増えます)、電話やネット回線、火災保険、NHKやケーブルテレビ、新聞代、自治会費。忙しかったり自炊が苦手だったりするとお惣菜やお弁当などの食費も増えますし、アイロンができずにクリーニングに出すことも。日用品代も増加します。

そこで、まずは今支出している項目を書きだして、それが離婚後にどのくらい増えるのか、シミュレーションしてみましょう。「ギリギリいける!」というのは危険です。住宅ローンは何年もにわたるものなので、無理は続きません。なんとか支払えていても、万一不測の事態が起こって破産してしまったら、結局は家を残すことができなくなります。それまで、切り詰めてがんばってきた支払いが無駄になってしまうのです。

それに対して、家は売却して、その売却益を分け合い、それぞれの生活の充実や子どもの教育費などに充てる、という考え方もあります。

住宅ローンが残っている場合に検討するべきポイントは、このほかにもたくさんありますが、まずは「ローンを払い続けることができるか」検討してみてください。