発達障害の子どもを連れて海外駐在に同行する⑤
カリフォルニアの田舎の現地校に入ることになった息子の入学後について、書いています。
息子のためのチームが作られました
教育委員会の方が1日息子の様子を見た結果、「支援を入れましょう」という結果になったと連絡が来ました。ついては、ミーティングがあるので何日何時に来てください、と。
ミーティングに参加したのは、知的支援級の先生2人・心理の先生・スピーチの先生・教育委員会のスタッフ、そして私です。先生方は、私が持参した成育歴やDVDなどの資料に目を通しておいてくださいました。「このメンバーが息子さんのサポートチームです。息子さんの成長をみんなで支えましょう!」というようなことを言っていただき、涙が出そうになったことを覚えています。
目標設定と定期的な達成評価
教育委員会の方の評価の結果、第一に取り組むべきなのは「姿勢の保持」「靴をきちんと履くこと」「英語であいさつを返せるようになること」だということになりました。これらが「人としての最低限のマナー」だというのです。
息子は、椅子に座るとぐにゃっとしてしまったり斜めになっていたり。靴も苦手で、椅子の下で脱いでいたりかかとを踏んでいたりしていました。特に靴については本当にマナー違反のようで、先生方も気合が入っており、「かかと踏みを見つけたら絶対に履かせます!」ということになりました。
また、英語が話せなくても、あいさつだけはしっかりできる必要があるから、ということで、「あいさつされたらあいさつを返す」ことが最初の目標でした。
目標設定はとても具体的です。例えば「あいさつをされたらあいさつを返す」という大目標を立てると、その達成のための道筋を月ごと、週ごとのステップに分けて、「1か月後には100%達成、来週までに50%達成」というように指標を決めていくのです。
そして、チームの先生がそれぞれ、息子にあいさつをしたときにどのくらいあいさつが帰ってきたかをカウントしてくださっているという流れです。
1か月後に目標が達成出来ていたら、今度はレベルを一段階あげて「自分からあいさつする」という大目標を、同じようなやり方でクリアしていきます。
このスモールステップに分けるやり方は、ハードルも程よく、期間も短くて達成感が得やすいのと、結果が数値で見えるので、階段を上るように成長する実感がありました。
日本で苦手だったことも、アメリカでは全く問題なかった
からかわれたり、学校生活で不自由をしたりしていた「手先の不器用さ」ですが、アメリカ基準ではむしろ「標準よりもややできる」の範疇です、といわれたことは衝撃でした。「まっすぐ線を描く」「紙を指示通りに切る」「紙を半分に折る」、すべてきれいにできています、と。
また、体育の授業もゆるく、楽しむのが第一でした。ボールを投げるのが苦手でもチームに迷惑をかけるという感覚はないらしく、バスケットボールなどに楽しく参加できていることも驚きでした。
ほかにも、日本で行き詰っていたことでも、所変われば捉えかたもかわるんだな、と思えることがたくさんあり、自分の思う常識は狭い世界のものだったんだなと実感することになりました。
月に1度のチームミーティング
支援級に在籍しながら、英語(日本でいう「国語」)の時間以外を通常級で過ごしつつ、クラスの空きを待っていたところ、2か月くらいで通常級に移ることができました。その後も小学校を卒業するまで、月ごと、期ごとの大きな目標設定を続けてミーティングで評価する、ということが続き、中学校に入るタイミングで支援を外れました。
子連れの海外駐在は、特別支援を受けなくても貴重な経験になると思います
ここまで我が家のことを書いてきましたが、駐在の国や地域、学校の様子や教育システム、親子の語学力などによって、事情はずいぶん違ってくることでしょう。
でも、もし特別支援をうけなかったとしても、日本以外の国で学ぶ「違ったものへの寛容さを受け入れる心」は、子育ての常識を覆すものになるでしょうし、その後の人生観を変えるほどの大きな経験になると思います。
これから子連れで海外駐在に行かれる方、今駐在中の方、大変なことも多いと思いますが、楽しくすごせるよう応援しています!