離婚後でも公正証書の作成は可能!養育費や財産分与を公正証書に。メリットと注意点も

離婚後にも公正証書は作成できます

財産分与や養育費などお金のことを取り決めなかったり、目先の離婚を急がざるをえなかったりして、書面を作らずに離婚届を出してしまう方が多くいらっしゃいます。そもそも公正証書作成のことを知らなかった方もいらっしゃいます。

そして、あとから「養育費を決めておけばよかった」「口約束で支払ってもらっている養育費が止まったらどうしよう」と心配になることも。

離婚後に「公正証書を作っておけばよかった」「今からでも作れる?」と思われる方は、ぜひ参考にしてみてください。

離婚後の公正証書作成には、ふたりの協力と合意が必要

離婚後の公正証書作成で必要なことは、契約内容の合意と公正証書作成の合意です。

離婚のタイミングで作成する場合にも同様の合意は必要ですが、離婚後はふたりが連絡をとったり話し合ったりすることが難しくなるので、離婚後に公正証書作成が可能かどうかは、ふたりの関係性次第といえるでしょう。

離婚の際に公正証書を作成していなかった場合も、いろいろなケースがあります。

しっかり話し合って合意をしていたけれど、事情があって公正証書にはしていなかった、という場合は、公正証書作成の同意と、契約事項の確認ができれば、公正証書作成が可能です。

ですが、何も決めずに離婚届を提出していたような場合は、公正証書にする条件の調整などを話しあうところからスタートになります。

養育費など、一部分だけを公正証書にすることもできる

一般的に、離婚の公正証書を作成するときには、取り決めた離婚条件を漏れなく記載します。

自分の譲れるところ・妥協できないところを明確にしながら話し合いを重ねて、最終的にふたりが合意した契約を公正証書にするのです。

ですが、離婚後に公正証書を作成する場合には、養育費や財産分与など、公正証書にする意義がある点に絞ることもあります。そのほうが、相手と話し合う時間やメンタル面でのハードルが低くなるからです。

(※財産分与に関しては、後で説明する離婚後2年以内という時間制限に注意)

公正証書作成の大まかな流れ

公正証書に記載したいことがまとまって、夫婦ふたりが公正証書作成に合意したら、公証役場に連絡をしましょう。その後、公証役場とのやりとりを重ねて、公正証書の文面を完成させていきます。

予約の当日は、基本的には夫婦二人が公証役場に出向いて、公正証書の作成をします。

所要時間はだいたい30分前後くらいです。

夫婦のどちらかが仕事などで公証役場に行けない場合には、行政書士などが代理人としていくことを認めている公証役場もあります。

川崎の公証役場
事務所のある大森から2駅の川崎公証役場。駅前三井住友信託銀行の11階です。

離婚後に公正証書を作成することのメリット

離婚をして別々の暮らしを始めている中で、元夫婦がまた連絡をとって話し合う、というのは、思った以上に大変なことです。さらに、平日の昼間に公証役場に行く時間を作ることが面倒に感じられる方も多くいらっしゃいます。

ですが、それでも公正証書を作成する一番のメリットは、公正証書の強力な効力です。

公正証書は、調停調書・裁判調書などとともに、「債務名義」といわれます。

債務名義とは、契約で定めた金銭の支払いが履行されないときには、強制執行をすることができる公文書のことをいいます。

特に小さなお子さまを抱えての離婚では、養育費の支払いが長期間に及びます。けれど、相手の支払い意思がどうなるのかは、予測がつきません。取り決めをしていても、残念ながら不払いになってしまうことも多いです。

「仕方がない」とあきらめがちですが、養育費の請求は法律で決められた子どもの権利ですし、子どもの成長には待ったなしでお金が必要です。子どものためにも、養育費をしっかり受け取れる方法を考えておくことが大切です。

その点、適切な公正証書を作成していれば、養育費の支払いが滞ったときには、相手の給料や不動産等に強制執行をすることができます。

しかも、一度の強制執行で、将来分の養育費分の差押えもできます。さらに、区には養育費確保に手厚い制度を設けています。具体的には、通常の差押えですと、手取りが33万円以下の場合ではその4分の1までしか差押えできませんが、養育費にもとづく差押えでは、相手の手取額の2分の1まで再押さえができます。

一度給料の差押えをすれば、毎月自動的に給料から養育費の支払いを受けられるようになるのです。

それが会社に知られるのを嫌って、自ら養育費をキチンと払ってくれる、という心理的効果も大きいです。

離婚後に公正証書を作成するときの注意点

離婚後の公正証書作成は、できるだけ早くするようにしましょう。

理由は

・時間がたつにつれて疎遠になる

・面倒になったり、もういいや、とあきらめてしまったりする

・財産分与は離婚後2年以内という制限がある

・養育費がもらえるのは、請求したときから

離婚後2年を過ぎても、お互いが納得して合意して財産分与を行うのなら、問題はありません。

ただ、話し合いがまとまらずに調停を申立てるとなった場合には、申立てが受理されるのは離婚後2年です。申立てが2年以内なら、調停中に2年が経過しても大丈夫です。

養育費は、子供の日々の生活のお金なので、離婚から何年たっていても請求できます。ただし、過去の養育費は、原則として請求することができません。

なので、養育費について決めずに離婚してしまったときは、子どものためにも、特に早めの合意と公正証書作成を目指すことをおすすめします。

話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に調停を申立てる

そうはいっても、状況によっては話し合いができなかったり、公正証書を作成することに同意を得られなかったりすることもあるでしょう。

そのようなときは、家庭裁判所に「養育費」「是遺産分与」の調停を申立てることができます。

調停の際には、代理人(ほとんどの場合弁護士)を依頼することも多いですが、ご自身で対応することも可能です。

調停で合意が成立した場合に作成される「調停調書」は、債務名義になります。また調停が不成立になったときには、審判という手続きに移行して、「審判調書」が作成されます。内容が希望通りになるとは限りませんが、債務名義を取得することは可能です。

家庭裁判所の調停
霞が関の東京家庭裁判所本庁

まとめ

ふたりの話し合いと協力が得られれば、離婚後に公正証書を作成することも可能です。小さなお子さまがいるときには、ぜひ公正証書作成を検討してください。

また、財産分与については、離婚後2年の排斥期間に注意しましょう。

何かわからないことがあるときには、ぜひ離婚協議書作成に詳しい行政書士に相談ください。