離婚はアスペルガーのパートナーを見限ることではありません。

アスペルガーのパートナーとの離婚にあたって、「自分は人として最低なのではないか」と罪悪感にさいなまれているかたがいます。パートナー自身に責任があるわけではない障害、しかも結婚前にはその部分に魅力を感じたこともある障害特性を受け入れてあげられないなんて。もっと歩み寄ってあげられたかもしれないのに。

そんなときには、「離婚はあなただけのわがままではありません。パートナーも、居心地の悪さから解放されて心地よく過ごせるようになるかもしれませんね」とお話しすることがあります。

アスペルガーについての本には、必ずと言っていいほど「特性の現れかたは多様です」と書いてあります(私もこのホームページの中で、そのように書いています)。

そして、特性をしっかり理解することは、パートナー自身の行動や気持ちを理解して、ふたりの関係をよりよいものにするためには何より大切です。

でも、発達障害という枠から離れて大きな視点でみてみると、そもそも世の中の人ってものすごく多様だな、と思いませんか?発達障害の特性「以外」の際立った特徴を持っている人だって大勢いませんか。

カサンドラ状態になってしまうと、「発達障害」「アスペルガー」が視点の中心になってしまうけれど、世の中にはそれ以外にももっとたくさんの「特徴」があふれています。運動が得意な人と苦手な人、アウトドア派とインドア派、人当たりがいい人と引っ込み思案、クリエイティブ派か与えられたことをきっちりこなす派か、慎重派か行動派か、大筋をとらえたいのか細部まで知りたいのか、などなど、挙げればきりがありません。そして、アスペルガーの基準というのは、そんなたくさんの要素の中のほんの一部分。

スポーツが苦手な夫と大好きな妻、山派の夫と海派の妻、大音量の音楽が好きな夫と静寂を好む妻。『発達障害当事者とそうでない人』は、そんな組み合わせのひとつという捉え方もありなんじゃないかと。

なので、発達障害のパートナーと離婚することになったとしても、夫が悪いのでもなく、妻が悪いのでもない。ただ、ふたりの関係性がミスマッチだっただけなのです。ミスマッチな夫婦でも、お互いが理解しつつ、ある程度寄り添っていけるならば結婚生活は続けられるでしょう。けれど、お互い(またはどちらか一方)が無理していたり、つらくなったり、どちらかがどちらかに合わせるよう強要するような関係なら、離れるということも選択のひとつだと思うのです。

離婚は、このミスマッチから解放されること。なので「障害」という視点ばかりにとらわれなくて大丈夫(ただし、離婚の手続きを進める上ではパートナーの特性をふまえることが大切です)。

アスペルガーのパートナーとの離婚に罪悪感を持つ必要はないですよ。

離婚後は、自分だけでなくパートナーも「そのままの自分」に戻って、自分の心地よい場所で自分らしく生活できるのかもしれません。