養育費・婚姻費用算定表とは?算定表の使い方と疑問点を解説
協議離婚の際に決める養育費の額や別居時の婚姻費用の額は、ふたりが合意をすれば、いくらでもかまいません。そうはいっても、話し合いをする上である程度の目安が知りたいと思われるでしょう。
その場合、多くの方が、算定表の額を参考にするはずです。
では、養育費・婚姻費用算定表とはどんなものでしょうか。今回は養育費に絞って、その使いこなし方と、算定表では解決できない事例の解説をしていきます。
どうぞ参考にしてみてください。
養育費・婚姻費用算定表とは
算定表とは、養育費と婚姻費用の算定を簡易化して、迅速に算定ができるようにした表です。
裁判所で算定表が最初に提案されたのは、平成15年です。それまでは、公租公課や経費などを個々に計算していたので、計算方法も複雑で、当事者が結果を予想することも困難でした。
算定表が提案されてからは、当事者があらかじめおおまかな予想をすることができるようになり、また、スムーズな手続きも可能になりました。
その後、社会実態の変化にともなって改定がなされ、今は、改定後の算定方式(標準算定方式)と算定表(改定標準算定表)基づいて実務が行われています。
ところで、そもそも養育費とは何でしょう?
養育費を考える前に、まずは「扶養義務」について考えてみましょう。
一般に扶養義務は「生活保持義務」と「生活扶助義務」に区別されます。
「生活保持義務」とは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務、「生活扶助義務」とは「自分の生活を犠牲にしない程度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務」とされています。つまり、義務のレベルは、「生活保持義務」>「生活扶助義務」です。
では、養育費の支払い義務はどちらにあたるのでしょうか?
養育費の支払い義務は、義務のレベルが厳しい「生活保持義務」だと考えられています。
(参考:親族間の扶養義務は「生活扶助義務」です)
なので、養育費の額を決めるにあたっては、「生活保持義務」として適正な金額であるかのポイントが大切です。
養育費算定の基本的な考え方
算定表の基本的な考え方は、義務者・権利者の実際の収入金額を基礎として、「子が義務者と同居しているとしたら、子のためにかかっていたはずの生活費はいくらか」を計算します。
そして、これを義務者と権利者の収入割合で按分し、義務者が支払うべき養育費の割合を決めます。
算定表に反映されている子の生活費の指数について
算定表の額には、子の生活費の指数が反映されています。
子の生活費の指数:成人の必要とする生活費を100とした場合の子の生活費の割合(指数)
(生活費の指数化については、生活保護法第8条に基づき厚生労働省によって告示されている生活保護基準の内「生活扶助基準」を利用して積算される最低生活に教育費を加算して算出されます)
子の標準的な生活費の指数(親を100とした場合)
年齢0歳から14歳までの子:「62」
年齢15歳以上の子:「85」
算定表の使いかた
1.まず、権利者・義務者それぞれの総収入を確認しましょう
㋐ 給与所得者の場合
年初に交付される源泉徴収票の「支払金額」が総収入にあたります。課税証明書でも確認できます。給与明細書の場合は、月ごとに変動が大きい場合はある程度の期間のものを確認するとよいでしょう。また、給与明細書には賞与・一時金が含まれていないので、別途確認しましょう。
㋑ 自営業者の場合
確定申告書(税務署の受付印又は受付印字のある控え)の「課税される所得金額」に、「社会保険料控除」以外の各控除項目及び「青色申告特別控除額」及び実際に支払いがされていない「専従者給与8控除」額の合計」を加算した額を総収入とします。
「所得金額」の「合計」から、「社会保険料控除」のみを控除して、「青色申告特別控除額」オヨに実際に支払いがされていない「専従者給与(控除)額の合計額」を加算した額でもいいです。
㋒ 無職または収入が不明の場合
働けるのに働いていない場合には、これまでの収入歴や賃金センサス等を参考にして、もし働いていたら得られたはずの収入を推計して、これを基準にします。
参考)厚生労働省令和3年賃金センサス
2.それぞれの収入を算定表に当てはめて、該当する額を確認します
算定表の横軸は権利者の総収入、縦軸は義務者の総収入です。
子の人数と年齢によって表を選択して、その表の権利者・義務者の収入欄を給与所得か自営かによって選びます。そして、その収入からのばしたところが交差する欄の額が、標準的な養育費の額を示しています。
子が複数の場合は、子の生活費指数で按分した額を、それぞれの子ごとの養育費額として定めていきます。
詳しくは裁判所ホームページの算定表をご覧ください。
算定表の額を参考にするにあたって気をつけること
算定表はあくまでも標準的な額を簡単迅速に算出することを目的としています。
ですので、話し合いにあたっては、個別の事情も考慮することも可能ですし、算定表にとらわれずにふたりで納得のいく金額を取り決めることも可能です。
算定表の額をたたき台にして話し合いをする場合には、算定表の中ですでに考慮されている事項と考慮されていない事情を考えるといいでしょう。
算定表・養育費にまつわる疑問など
児童手当は収入に加算しますか?
児童手当は加算しません。児童手当や児童扶養手当は、児童の福祉という政策目的のための私的扶助だからです。
実家からの援助は収入に加算しますか?
基本的に加算しません。実家からの援助は、好意による贈与と考えられるので、収入とするのは相当ではないからです。
権利者や義務者に多額の負債がある場合には、どう考えますか?
どのような原因で出来た負債かによります。一般的には生活保持義務にもとづく養育費支払いに優先するような負債は考えにくく、負債があるというだけでは特別な事情があるとはいえないでしょう。ただし、その負債が住宅ローンや同居中の生活費、教育費のための場合は、権利者と義務者で按分するという方法が考えられます。
子の私立学校の学費や、塾の費用はどう考えますか?
算定表では、公立中・高校を前提としていますので、義務者が私立への進学を了承していた場合などは、加算を検討することも考えられます。
子が12歳と15歳の2人の場合、それぞれの子の養育費はどのように決めるのでしょうか
算定表で求められた額を2人で分けることになるのですが、基本的には配分指数の割合で按分します。
例えば、10万円でしたら、これを第1子と第2子で85:62の割合で按分します。ただし、ふたりの金額を同額にすると合意することもできます。
まとめ
養育費の額を決める話し合いの参考になりましたでしょうか。
当事務所では、協議離婚に精通した行政書士が、漏れのない離婚協議書・公正証書作成のサポートをしています。
何かわからないことがありましたら、お気軽にお声かけ下さい。