パートナーのアスペルガーを理由に離婚はできるか。3つのステップに分けて考える必要があります

昨日からの続きです。

裁判で離婚が認められるための基準

相手が離婚に応じようとしてくれないときには、「裁判になったときに、離婚が認められるかどうか」という視点が大切だというお話をしました。

では、パートナーがアスペルガーあることだけが理由の離婚は、裁判で認められると思いますか。認められないと思いますか。

答え:認められません

なぜかというと、裁判では、下に挙げた「法律で決まっている5つの離婚事由にあてはまるかどうか」だけで判断されるからです。

  1. 不貞行為(浮気・不倫)
  2. 悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)
  3. 3年以上の生死不明
  4. 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

このいずれかに該当すれば離婚が認められ、該当しないならば離婚が認められません。

アスペルガーは「強度の精神病」といえるのか

では、アスペルガーの場合は、このどれかに該当するでしょうか。

診断が下りている場合には「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」に当たりそうに思えますね。けれど、実際のところは「強度の精神病」とまでは言えない、ということで、離婚が認められたケースはほとんどないのです。

※ちなみに、これにあたるとされている精神病には『統合失調症・躁うつ病』などがあります。『アルコール中毒・麻薬中毒・ヒステリー・神経衰弱症・認知症など』は該当しないと考えられています。

それでも裁判離婚の可能性はあります。「夫婦関係の破綻」が認められるかどうかがポイント

では、裁判では絶対に離婚を認めてもらえないのかというと、そうでもありません。

「アスペルガー」はいったんわきに置いておいて、5つの離婚事由のうちの最後の項目「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」にあたるかどうかを考えてみます。

具体的には、「夫婦の愛情がなくなって夫婦関係が破綻している」と認めてもらえれば、裁判でも離婚の判決をもらえる可能性があるということになります。

夫婦関係の事情には、例えば、『暴行(DV)・虐待、モラハラ、仕事をしない、浪費や散財が激しい、犯罪を行った、親族問題、宗教問題、性的不能・拒否、性的異常行動、性格の不一致、価値観の相違』などがあり、何個かが重なっている場合もあります。

アスペルガーの特性がこういう状況を引き起こしていることも多いので、アスペルガーのパートナーとの離婚を裁判で争うとしたら、上記に該当することを証明できる客観的な証拠があるかどうか、を考えてみましょう。

ちなみに、長期間別居をしていたり、家庭内別居状態であったり、過去に何度も離婚について具体的に話し合いをしたことがあったり、という場合には、夫婦関係の破綻が認められやすいようです。

つまり、アスペルガーによるすれ違いが原因で別居に至っているような場合には、「婚姻関係が破綻している」として、裁判でも離婚が認められる可能性がある、ということになります。

ふたりで話し合いができれば、協議離婚が可能

ここまで裁判のことを見てきましたが、ふたりで話し合いできるようなら、通常は、まずは話し合いを優先します。パートナーと話し合ってお互いに合意できれば、「アスペルガー」が理由であっても、ほかのことが理由であっても、どんな理由であれ離婚が可能だからです。

ただ、アスペルガーの特性の「予定外のことや予測がつかないものに対する不安」からくるパニックなどで、話し合いがうまく進まないことも考えられます。ただでさえ離婚の話し合いは負担が大きいものなので、人によってはフリーズしてしまうことも。

そうならないためにも、離婚を切り出すタイミングや言い出しかた、説明のしかたや話し合う場所など、パートナーの特性をよく考慮して、お互いに冷静に話せる環境を心がけましょう。通常の「離婚経験者」のアドバイスが、自分たちにはあてはまらないかもしれないことをお忘れなく。