発達障害児に分かりやすい=みんなが分かりやすい
幼稚園年中のおわりにアスペルガーの診断を受けた息子は、いろいろな療育や、特別支援のお世話になったのですが、どこでも必ず言われたアドバイスが、
「~しちゃだめ」と言わず、「~します」のような肯定文で指示を出しましょうということ。
「走っちゃダメ!」ではなく「ここでは歩きます」みたいな。
このアドバイスには変化球もあって、「~しちゃだめって言ったでしょ!?」はNG。(「はい、言いました」というリアクションになりがちです)
こんなことを書いているのは、先日、このアドバイスを思い出すような出来事に遭遇したから。
近所の神社公園に、保育園の子どもたちが遊びに来ていました。3~4歳くらいでしょうか。可愛いな~と思って見ていたら、ひとりの子が、砂場の砂をすくって、手水鉢の水に入れて遊びはじめたんです。
それを見つけた保育士さんが、立て続けにしていた声掛けがこんな感じ。
「ちょっと!何してるの!」「そこは何をするところ?」「そのお水は何に使うか知ってる?」「お砂場の柵から出ていいんだっけ?」「今までそうやって遊んでいる人見たことある?」
声掛けがすべて疑問文なんです。4歳くらいのその男の子は、なんだか知らないけれど怒られたぞ、という感じで固まっています。
そして、あまりに典型的なやりとりが目の前で繰り広げられた驚きで私まで、固まってしまいました。この「今すぐやめなさい」というニュアンスを含んだ疑問文を、言葉通りに受け取って答えようとしたら、そりゃ誰だってフリーズするだろうな、と思いながら。
固まる男の子を前に、保育士さんは、「もう~~。こんなことしたらダメでしょ」といって、手水の泥をすくいだしていました。
この子の様子からは、発達障害の傾向はなさそうに感じましたが、それでも、この保育士さんの声掛けが響いているようには見えませんでした。「なんか怒ってる」「僕、叱られてる」というのは伝わっているようでしたが、「じゃあ、今ぼくはそうすればいいの?」ということがわからず、棒立ちでいる、というふうに感じました。
これがもし、「お砂はお砂場のなかだけで遊んでね」というシンプルな声掛けだったら、伝わったかもしれない。
「何で~なの?!」というのは、理由を聞かれているのではなく、それをやめなさい、ということ。そう分かっている私でも、「なんで~なの!?」という言われ方をされるより、「~してね」のほうが、すっと入ってきます。
つまり、発達障害の子どもがわかりやすい、ということは、誰にとってもわかりやすい、ということ。社会的弱者への配慮が、ひいてはみんなの利益になるということって、とても多いと思うのです。例えば、オリンピックで話題になったピクトグラムも、そう。
もともとはことばがわからない人のためのものでも、誰もが直感的に理解できて便利ですよね。
少しの工夫やヒントをどんどん取り入れて、どんな人にとっても暮らしやすい世界に近づけたらいいな、とあらためて思ったのでした。