養育費をしっかり受け取るために【事後的対応編】

前回の記事では、養育費を受け取るために離婚前にできる対策について書きました。

養育費の取り決めは必ず公正証書にしましょう。

離婚後は、毎月の支払日に、「きちんと振り込まれているかな・・・」と通帳を確認する日々が続きます。しっかり振り込みが続けばいいのですが、ある日突然、「え!?振り込まれていない!?」という日が来ることも多いです。

振り込み日を勘違いしているのかもしれない。忙しいだけかもしれない。そう思って、メールやラインを送っても、やっぱり入金されない。

そんなときにとれる方法を説明していきますね。

【養育費の確保の方法:不払い後】

1.履行勧告・履行命令(調停や審判で養育費について決めている場合)

調停など、裁判所の手続で取り決められた養育費の支払がない場合には、家庭裁判所から支払を勧告してもらうことができます。これを「履行勧告」といいます。裁判所から「すみやかに支払いなさい」という手紙(履行勧告書といいます)が来たり、電話が来ることもあるので、かなりのプレッシャーを感じることになります。

ただ、あくまで勧告なので、強制力はありません。

その一段上が「履行命令」という制度です。履行勧告をしても、まだ支払いがなく、家庭裁判所が「履行命令」を出した場合、正当な理由なく履行命令に従わないと、10万円以下の過料の支払が命じられることがあります。

ただ、過料「10万円以下」と、養育費の額を比較すると、履行命令が出されれば安心、とは言えないのが現状です。

2.強制執行

公正証書、調停調書、審判書、判決書などの債務名義がある場合には、「強制執行の申し立て」をして相手の財産を差し押さえ、養育費の支払いにあてることができます。

強制執行のメリット

  • 一度強制執行をすると、将来分も差押えできる
  • 相手が支払いたくなくても、回収できる
  • 銀行口座や給料を差押えできる

強制執行のデメリット

  • 相手に差し押さえる財産がない場合には、意味がない
  • 相手の勤務先や銀行口座等の差押え先がわからないときは、裁判所の手続きが必要になる 

 以前は、相手が「支払うお金がない」といえば、その言い分が通ってしまう状態でした。そのため、2020年4月に改正された民事執行法では、「第三者からの情報取得手続」という制度が新しくできました。これによって、相手が隠している財産を見つけることができるようになりました。この制度を利用するためには、いろいろな要件があります。詳しくは、管轄になる地方裁判所か、弁護士にお問い合わせください。

養育費の入金が止まってしまったあとにできるアクションは、ほぼこれくらいです。元配偶者と、お金のことで何度もメールなどのやりとりをするのは、とても疲弊することですし、「何としてでも払いたくない」という相手から、お金を支払ってもらうことはとても大変です。

そこで大切になってくるのが、公正証書などの「債務名義」です。離婚の前に債務名義を取得していれば、シンプルに強制執行の手続きをすることができるのです。

養育費は、子どもが一人前になるまでの長い期間にわたって続くため、その間には思わぬ出来事も起こってきます。相手の事情が変わって、減額請求をしてくることもあるでしょうし、受け取る側の事情もどうなるかわかりません。なので、最後まで満額を確保できる、と、当てにしすぎることはできません。履行の確保には限界があるのです。

だからこそ、相手が支払える状態にある間はしっかり払ってもらうことが大切です

「養育費の取り決めがあるときは公正証書に!」と言われる理由は、ここにあります。

そうはいっても、行政書士の報酬と公正役場への手数料がネックかもしれませんよね。離婚のときには、何かとお金がかかるものですし…。ですが、養育費が止まってしまったとしたら、もらえなくなるお金は何百万円という額です。お子さまの数や年齢によっては、何千万円という額になることもあります。言い換えると、お子さまは、これだけの額の「自分が大きくなるためのお金」を失うことになるのです。。

数か月分の養育費代相当で、お子さまのためのお金と、心の安心を得る、と考えていただければ、と思います。